コーヒーのコトせまくあさく

【コーヒー生豆のコト】

コーヒーの銘柄は基本的に産地(国・地域)ですが、表記は産地と商標(ブランド)・等級・大きさ・品種・精製方式等がごちゃまぜになり、しばしば消費者を混乱させています。

(商標)

『モカ』:イエメンとエチオピア産のコーヒー豆
『キリマンジャロ』:タンザニア産のもの。ブコバ産のぞく。
『マンデリン』:スマトラ島産のスマトラ式で精製された豆。

(等級)

『SHB』:ストリクトハードビーン、標高1300m以上で栽培されたコーヒー。
『SHG』:ストリクトハイグロウン、標高1200m以上で栽培されたもの。

標高の高い場所で栽培されるコーヒーは品質が良い傾向にあります。

標高10001200m:酸味が弱い
標高12001500m:程々の酸味と香り、
標高15002000m:良質な酸味と複雑で豊かな風味

(大きさ)

コロンビア
スプレモ>エキセルソ

アフリカ
E(エレファントビーン)>AA>AB
PB(ピーベリー、実の中の種子一つだけが大きくなったもの)

(品種)
コーヒーは品種よりも、テロワール(ある地域の地形、土壌、気候等)の方が風味に与える影響が大きい傾向にあります。代表的な品種の名前だけを紹介します。

「エアルーム(在来種)」「ゲイシャ」「ティピカ」「マラゴジッペ」「ブルボン」「カトゥーラ」「SL28」「SL34」「パカス」「ビジャサルチ」「ムンド・ノーボ」「カトゥアイ」「パカマラ」「カチモール」「セントロアメリカーノH1」

【コーヒー精製のコト】

収穫されたコーヒーの実は「ナチュラル」「ウォッシュト」「スマトラ式」「パルプトナチュラル」「ハニープロセス」のいずれかの方式で精製され、脱穀を経てコーヒー生豆になります。最近では『ダブルファーメンテーション(2段階発酵)』『アナエロビックファーメンテーション(嫌気性発酵)』が話題の精製方法です。

コーヒーの実は、シルバースキン(銀皮・チャフ)に包まれた種子(生豆)がパーチメントで覆われた状態で2つ向かい合っており、そのまわりに薄い果肉、そして外皮があります。

「ナチュラル」は果実味のある風味が特徴です。収穫したコーヒーの実をコンクリートの床あるいは高床式の乾燥棚に広げ、定期的に転がし、1030かけ、水分量1012%になるまで乾燥させます。乾いた外皮と果肉を機械で脱穀し生豆は出荷まで保管されます。

「ウォッシュト」の特徴は酸味が強いこと。クリーンカップ(すっきりして味を損なう苦渋味と雑味がない)であることです。収穫したコーヒーの実の外皮と果肉をパルパーで取り除きます。発酵水槽にその果肉層の薄い豆を入れ、発酵によって果肉を取り除きます。(平均1236時間)パーチメント付の豆をきれいな水で洗い、高床式の乾燥棚410日)、あるいは熱風を当てて回る
大きなドラムの機械で水分量1012%になるまで乾燥させます。パーチメント付の豆は3060日貯蔵された後、パーチメントを脱穀し、出荷されます。

「スマトラ式(セミウォッシュト)」の特徴は酸味が弱く、コクが深いことです。途中までウォッシュトと同じ工程ですが、パーチメント付の豆の乾燥は軽く、水分量が40%までで、パーチメントを脱穀機で剥がしてしまいます。その生豆を水分量が1012%になるまで再度乾燥させます。

精製方式は他に収穫したコーヒーの実をパルパーで、外皮と果肉の大部分を除去する「パルプトナチュラル」、それから外皮と果肉の一部を除去する「ハニープロセス」があります。ともにその後は水分量が1012%になるまで乾燥させます。貯蔵後、出荷前にパーチメントを脱穀します。


【焙煎度合のコト】
コーヒーの香味の傾向として、1ハゼ以降に酸味・香り・甘味・ボディ(コク)の順にピークを迎え、その後    減少していきます。2ハゼ以降はローストの香味、苦味・カラメル等が強くなり、豆そのものの持つ香りは隠れてしまいます。

1ハゼ(アポロ焙煎機の場合、豆温度200℃台)は、豆内部にガス・水蒸気が発生し、内圧が高まり豆組織が壊れる事です。その時、パチパチとはじける(はぜる)音がします。

1ハゼが終わり、焙煎が進むと、ガスが発達し、ピチピチと静かに音が鳴ります。これが2ハゼです。

1ハゼ以降、いつでも焙煎を止めて構いません。ライトローストは1ハゼの始まり、シナモンローストは1ハゼの連続、ミディアムローストは1ハゼの終わりです。2ハゼの始まりはハイロースト、2ハゼ連続10秒はシティロースト、連続30秒フルシティローストです。

たとえば、ミディアムローストを飲んで酸味をつよくしたいと思われたら、次はシナモン・ライトローストを試してみてください。また同じ産地 の豆を2通り、ミディアムとシティローストで注文し、それぞれを味わう事や5:5、6:4、7:3でブレンドして酸味と甘味・コクのあるコーヒーを楽しむ事も考えられます。

【コーヒーの苦味について】

『まろやかな苦味』・『すっきりした苦味』は持続時間の短い苦味であり、好まれています。それは不快に感じる寸前にきつい苦味が口の中から速やかに消える、キレのある味です。逆に持続時間の長い苦味は好まれず、口の中にとどまってしまう、後に残る苦味です。

コーヒー生豆に含まれる苦味の原因物質は主に「クロロゲン酸」「カフェー酸」「ジケトピペラジン類」です。「クロロゲン酸」の加熱物は最もコーヒーに近い苦味。「カフェー酸」の加熱物は深煎りエスプレッソの苦味と渋味に似ている。「ジケトピペラジン類」は黒ビールやカカオの苦味成分で、ダークチョコレートを思わせるコーヒーはその成分が多く含まれているようです。

さて、「コーヒーメラノイジン」という色素群には苦味があり、焙煎の過程で黄褐色、赤褐色、黒褐色と変化します。肉・野菜を焼いたときにできる『おこげ』、これがメラノイジンです。このアミノ酸と糖類の加熱で起こるメイラード反応、コーヒーの場合はクロロゲン酸類も反応に加わり、「コーヒーメラノイジン」と呼ばれます。黄、赤褐色は良いおこげですが、黒褐色は口の中にこびりつく苦渋味となる悪いおこげです。そういえば、『コーヒー・ルンバ』という歌の中に『こはくいろしたのみもの』とコーヒーが紹介されていますが、黄、赤褐色はこはく色ですね。

【コーヒーの甘味について】                                                                                               
香りの感じ方は主に2つあると云われています。1つは鼻のあなから吸い込む空気のにおいを感じる『鼻先香はなさきこう』。もう1つは口の中から鼻腔に流れる空気のにおいを感じる『口中香こうちゅうか』です。コーヒーを挽いた時に、淹れた時の香りは『鼻先香』、冷ましたコーヒーを口に含んだ時の香りは『口中香』です。

さて、コーヒーの甘味とは何なのでしょうか。コーヒー生豆に含まれるショ糖は少なく浅煎りの時点までにほとんどが熱分解され、味覚として甘味と感じるだけの濃度は残りません。そこで私たちが『口中香』を感じる時に、嗅覚が味覚と混同される『共感覚』現象が起きていると考えられています。コーヒーの成分に焦がし砂糖のような甘い香りの「フラノン類」があります。その「フラノン類」を『口中香』として感じる時、共感覚によって、この香りの甘さを甘味のように感じていると推測されているのです。この「フラノン類」は中煎り付近をピークに深煎りになるにつれて減少していきます。しかし 深煎りのコーヒーに甘味のようなものを感じた事があるという人はいて、まだ謎ですが、香り以外の 何かが関係しているのではと云われています。

参考文献:
ジェームズ ホフマン著『ビジュアルスペシャルティコーヒー大事典普及版』
セバスチャン・ラシヌー/チュング-レング著『コーヒーは楽しい!』
 旦部幸博著『コーヒーの科学』



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